さくらいろのあお

 去年からずっと、前田くんは私の青いあざに気がついていないかのようだ。
「村家。それじゃ一局、指さないか」
 前田くんが空いている席に座る。
 私は前田くんの向かいに座る。
 前田くんは目線を下げ盤面を見つめながら駒を初期配置に置く。
 パチリ! パチリ!
 私はススッと並べて、先手後手を決める振り駒をする。
 ジャララ……。
「村家は、いまアマ初段?」
――春休み中の新聞社の昇段テストに落ちました。
「アマ一級だよ」
「そっか」

 私と前田くんは、パチリ! パチリ! と将棋を指す。

 アッハッハッハ!
 琴音さんの楽しそうなお喋り声が聞こえる。

 ――十分程が経過した対局の最中、盤面が中盤の只中にある時だった。
 ガタッ……!
 私は「わっ!」と驚いて声を漏らしてしまった。
 前田くんは「ちょっとごめん」と言って立ち上がると、そそくさと部室の玄関から廊下へ出て行った。
――おいおいおい。対局中だろう。