さくらいろのあお

 中学時代は、あざをじっと見て話す人が、男女問わず、何人かいた。
 高校では、皆、部活とか、勉強とか、方向性を持って暮らしている。
 他者に思うことも、その方向でもって進んでいるとか、遅れているとかそういう目線が多い気がする。成績の良い人、部活で強い人、人付き合いが上手い人、彼らへの羨望だったり、尊敬だったりする心を持って、優れた人を見ようとする目で他者を見る。
 それでいて、そんな自分達が善良だという感覚があるわけでもない。昨年は定期テストの成績上位者が教室に貼り出されていた。おそらく今年もだと思う。たとえば学業成績で私達は互いに競い合う存在でもある。善良というよりもむしろ競争心を持っている。
 顔に青いあざがあるからとか、ある癖にとか、自分で自分を責め立てても、周囲の同年齢から後れを取っているような、違和感を覚える。
――何もかも青いあざのせいだと思うときがある。
「これは呪いだ!」
 私は心の中で呟く。青いあざは、私を稚拙な価値観に閉じ込める呪いだと感じる。自分の精神は知らず知らずのうちに、青いあざに毒されている。青いあざを考えても、考えなくても、とにかく青いあざが起点となっているではないか。
 私は去っていく松岡くんの後を追わなかった。
――このまま帰りたい。……でも私も荷物を部室に置いたままだ。
 私は少し間を置いてから部室に戻る事にした。
――それにしても琴音さんは策士だな。
 正門広場の桜がまだ綺麗だ。
 もうすぐ夕闇が来て、五分咲きでも夜桜のような風情がまた映える。
――でも琴音さんには本当に片思いの相手がいるのかも?
 私はその場に五分くらい佇んでしまった。
 ズンチャッチャ♪ ズン♪
 私は「うわっ」と思わず声を上げてしまった。
「なんで忘れて行くの?」
 松岡くんの携帯電話が落ちていた。
 私は落とし物を拾おうと手を伸ばす―仕方がない、届けてあげよう。
 ズン♪ ズズチャッ♪ ズズン♪
 応答するのは躊躇った。
 ズン……。
 音が止み、待ち受け画面が浮かび上がった。
――琴音さんとのツーショット写真。
 私は二人の制服姿しか見た事がなかった。
 私服で会っている二人の楽しそうなツーショットは本当に気心知れた仲に見えた。
「松岡くん。もう付き合っているつもりだったのだな。ちょっと可哀想」
――琴音さん、策略にせよ本心にせよ、何を思ったのだろう。
 私は落とし物を手に持って部室に戻った。