さくらいろのあお

 ジャララ……。
「沙織さん! もう一局指そう!」
 
――あっという間に終わった始業式とホームルームの後。私は、文化部室棟の廊下の突き当りにある将棋部の部室で将棋を指す。
 
 将棋部には、私の懇切丁寧な友人がいる。
「琴音さん。お手柔らかにお願いします」
 三石琴音は、囲碁から転向したアマ二段。
 長い黒髪を臙脂色のリボンでハーフツインにして結んだ美少女。
 私達は、将棋の駒を整然と並べる。
――それにしても、琴音さんは、春休み中は誰とデートしたのだろうなあ。
 パチッ! パチッ!
 対局を進めると、中盤の乱戦を経て、終盤。
 私は、いつも一歩及ばず琴音さんに負けてしまう。
――ひとつの対局に三十分程度の時間がかかる。
「参りました」
「ありがとうございました! 感想戦をしよう!」
 感想戦は、対局を終えたあとに行う小さな反省会だ。
 勝った琴音さんが、穏やかに指摘や助言をくれる。
 その十五分ほどの時間が、何より勉強になる。
 棋力で上回る彼女の言葉には、いつも新しい気づきがある。
――尊敬できる人なのに、いろんな男子とデートをする人でもある。