【番外編集】鷹宮先輩、ズルいです 〜泣き顔を拾われたら、極甘上司に溺愛されました〜

ガトーショコラが入った紙袋を手に、玄関まで見送る。

「ありがとう、ほーりーのおかげで助かったわ」

「お役に立てて、よかったです」

「璋も悪かったわね、いちゃいちゃを邪魔して」

「そう思うんやったら、早よ行け」

璋さんが後ろから抱きしめたまま、軽くあしらう。
雪乃先輩は、「うざっ」と笑いながら帰っていった。

璋さんは軽くのびをして、リビングへと戻っていく。
でもどこか、スッキリとした表情だ。
 
「ほんま、世話のやける奴らやわ」
 
「気づいてたんですか?」
 
「まぁ、付き合い長いしな――あと松原も」
 
「仕方ないですよね……」
 
(……それでも、いつか)

雪乃先輩への想いさえも良かったと思える日が来ることを、祈らずにはいられなかった。
 
璋さんの大きな手が、くしゃっと頭を撫でる。 
  
「松原なら、うまく折り合いつけるやろ」
 
「はい……」

ソファに座った璋さんが、軽く手招きをする。
近寄るとそのまま手を引かれ、シトラスの香りに倒れ込んだ。
 
重なった胸元から伝わる、璋さんの少しだけ早い心拍数が、妙にくすぐったい。 

「はぁー……やっと葵をチャージできたわ」 

回された腕に、ぎゅっと閉じ込められた。
そのまま耳の後ろをなぞる舌先に、背筋が小さく震えた。 

「甘っ……」
 
「……璋さんっ……」    
 
一緒に住んでいるのに、まだこの雰囲気は気恥ずかしくて。   
心ばかりの抵抗を試みるも、ただ彼を喜ばすだけだ。

「……ちゃんと、用意してあるんですっ……カフェモカ……」

「ん、――でも"葵"が先やな」     

お約束すぎる展開なのに、抗えない。
肌がふれあい生まれる熱と、甘すぎるキス。
深くなるたびに、息の逃げ場がなくなる。

「俺は、葵しかいらん」 
 
選ばれるって、こんなにも温かい。
まだ微かに漂うガトーショコラの香りに、雪乃先輩たちの影が重なる。
  
だから――雪乃先輩も、ちゃんと“選ばれますように”と、願わずにはいられなかった。

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