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「あ、あの。ロード様?」
「ん? どうした?」
「えっと……どうしてロード様がこちらに? カイエン様とのお話し中では?」
「セーラが庭園を見たいと言ってくれたんだ。王宮の中は王族である俺が案内するのが当然だろう?」
そう、なのかな?言われてみれば確かに一理あるかもしれない。
「なんてな。ただ俺が心配だっただけだよ。それに、俺は今セーラの護衛だから。当たり前のことをしてるだけだよ」
「護衛!? そんな、私に護衛なんていいのに……」
「聖女様を一人で歩かせる方が問題なんだ。わかってくれ」
そういうものなのだろうか。私にはよくわからない。
リゼがロード様に許可を取りに行くと、何故かロード様が戻ってきたから驚いた。リゼに着替えを手伝ってもらって、綺麗なドレスに身を包んでロード様にエスコートしてもらい今に至る。
「ここは段差があるから気をつけて」
「はい」
段差や階段のたびに手を差し出してくれて、緊張しながらもその手に自分の手を重ねる。
日本ではありえないような出来事に、心臓がドキドキして落ち着かない。
王宮は広く、まずそこから庭園に出るまでしばらく歩いた。
「ここから出られるよ。おいで」
「う、わあ……」
勝手口と呼ぶには豪華すぎる扉の向こうには、さっき窓から眺めていた美しい庭園が広がっていた。雲ひとつない快晴の空の下で、色とりどりの花たちがそよ風に揺られている。
赤にピンクにオレンジ、綺麗な青や水色に紫。まるでお花の絨毯が広がっているみたいに美しい景色に、言葉を失う。
「すごい……とっても綺麗」
「ここは元々王妃様のための庭園でね。王妃様は一時期お身体の加減が悪くあまり王宮の外に出られなかったから、王様が王妃様の好きな花をたくさん植えて作ったんだ」
「そうだったんですか。素敵なお話しですね」
花畑に近付くと、一種類ごとにその花の名前が書いた小さな立札が埋められていて、それを眺める。
しかし文字までは解読できず、苦笑いをこぼした。
「聞けて話せても、文字を読んだり書いたりはできないみたいです。残念」
この綺麗なピンク色のお花はなんで名前なんだろう。知りたかったな。そう思っていると、ロード様が
「その花はシュルクの花だよ」
と教えてくれて驚く。
「シュルク?」
「あぁ。他にも気になる花があったら俺が教えてあげるよ」
「ありがとうございます」
シュルクの花。とても綺麗で、日本にあるコスモスみたいな綺麗なお花だ。
他にもチューリップやガーベラにそっくりなものや、バラに似ているもの、桜みたいな花が咲いてる木もあってどこを見ても目が楽しい。
一度にたくさんの花の名前を覚えられそうもないと言う私に、ロード様は何度でも教えてくれると言ってくれた。
「すごく素敵な庭園ですね」
「気に入った?」
「はい。とても」
「よかった」
そのままぐるりと庭園を回っていると、不意にどこかから
「ロード殿下!」
とロード様を呼ぶ焦ったような声が聞こえて二人で振り向く。そこにはロード様と似た騎士の制服を着た男性の姿が。
するとロード様はあからさまに嫌そうに眉を顰めた。
「なんだ急に。聖女様の御前だぞ。不敬じゃないか」
「申し訳ございません。至急の伝言があったもので。……王様が、ロード殿下と聖女様をお呼びです」
「なに?」
「すぐに二人揃っていらっしゃるようにとのことです」
「……わかった。すぐに向かおう」
王様が?私とロード様を呼んでいる?
何の用だろう。一瞬そう考えたけど、魔力により言葉が通じるようになった私に話があるのだろうとすぐに想像がついて息を吐く。
「……セーラ。もし嫌だったら……」
「……いえ。大丈夫です。参りましょう」
「……つらくなったら、すぐに言うんだ。わかったな?」
「はい、ロード様」
ロード様にエスコートしてもらい、庭園を出る。そしてそのまま王様の元へ向かった。



