この家、全員まともじゃない。

しばらく、歩いた。


暗闇の中を。


そして、ただひたすらに────


「お母さんっ……。……っ、ううっ……」


────泣いていた。


私とお母さんは母子家庭で、お父さんとは離婚したらしい。


だから、きっとお母さんはお父さんの愛情というものを教えてあげたくて、再婚したんだと思う。


なのに、お金っ……?


違うでしょ……


単純に、私はお母さんといつまでも居たかった……


……一緒に。


こんな……、こんな……。


もうほんとに、どうしよう……っ


「はぁ……」


深い深い、余裕のないため息をついた。


もう全てがどうでも良くなってきた……


このまま、死んじゃおうかな……


そう本気で思ってしまった。


でも死ぬのは怖くて、そこら辺の電柱に寄りかかってしゃがんだ。


「はぁ……」


二度目のため息。


もしここで、誰かが────、


手を差し伸べてくれたら。


そんなありえない自分の妄想に、吐き気がした。




「あれあれぇ?」




綺麗な声が聞こえた。


なんだろう……、と思って顔を上げてみる。


目の前に。


至近距離に。


美人さん……っ?


「え、」


その顔が、あまりにも眩しすぎて、直視できない……


顔、可愛いっ……!


私のテンションが、爆上がりした。


目の保養を見ると、なんか心が安らぐっていうか……


ふわっ っていうそんな可愛い感情かな?


可愛い可愛い、男の子。


中性的な顔立ちだけど、絶対女の子とは言えないような何かがある。


その男の子は、にこりと天使のように微笑んだ。


「何してるの?」


「あ、えと……」


さすがに「新しい家族が嫌でお母さんと喧嘩しました」なんて言えないっ……


どう言えば……


戸惑っていると、男の子は安心感がある優しい笑みを浮かべた。


「僕んち、来る?」


「へっ?」


驚いて、情けない声を上げてしまう。


だって、いや、男の子の、家、に……だよ?


びっくりして固まった私を、その男の子はクスッという笑いで済ませた。


わ、笑い事じゃなくてっ……


「まず、お名前教えて?」


にこっと笑う男の子。


わ、私、家に行く確定なんですかっ……?


ま、まあ、名前は教えといた方がいいよね……


「神崎、琴音……、です。」


「……名前も可愛いね〜。」


「なっ……」


そ、そんな……


すらっと……


言葉に…………


男の子は意味ありげに目を細めた。


「じゃあ、行こっか?……義姉さんっ」


最後まで聞き取れなかった、けど……


「わわっ……!?」


ぐいっと手を引かれて、半強制的に連れてかれる。


「ま、待って……っ」


知らない人に着いて行っちゃダメでしょっ?


「やーだ♡」


パチン、とあざとくウインクをする男の子。


か、可愛い……っ


……って、そんな事思っちゃダメだ……


頑張って抵抗するけど、見た目に反して力強くない……っ?


こうして、可愛い男の子が女の子を引きずっているという奇妙な絵図になった。


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