この家、全員まともじゃない。

Side:青雲 澪




「おーい。」


澪の部屋のドアが、遠慮なく開けられる。


眩しい光が差し込んで来て、思わず目を細めた。


「何……?」


視線を向けると、そこに居たのは蓮兄だった。


「神崎 琴音って知ってる?ホワイトブロンドの髪の美少女。」


「……。」


ホワイトブロンド……?


なんか知ってる気がする。


「あの二つ結びの子……?」


「そそ。その子にお前の事紹介するから、来て。」


「……えっ。」


紹介……?


いや、気まずいから断ろう……


「……無理。」


「えー、無理って言うのナシ。」


なにそれ……。理不尽……。


「……だって、仕方ないじゃん……。」


「え?何が。」


……もう蓮兄は、デリカシー無さすぎ。


「……そんなんでよく彼女できたね。」


「ごめん聞こえなかったわー」


耳を塞いでわざとらしく目を瞑る蓮兄。


「……とにかく、行かないから。」


意地でもそう決めた。


多分あの子も怖がってるだろうし……


衝動的に運命の相手と思ってしまった澪が恥ずかしい……


「なんか会ったのかは知らないけど、多分もう忘れてるんじゃね?」


「そんな馬鹿じゃないよ、女の子は。」


楽観的なのか、女の子を馬鹿にしているのか。


蓮兄は、昔から同性よりも異性を過剰に見下す傾向があった。


「あーはいはい。そういうのいいから。これ以上待たせるともっと嫌われると予想。」


蓮兄がわざとらしく横目で意地悪く見てくる。


……煽ってるのか。大人気ないな。


「……別に。嫌われてもいいし。」


本当は、良くない。


むしろ好きになってほしい……。


「ツンデレなんだろ?俺が上手くやるから。」


「えっ、ちょっ──」


「いいから任せてろって。」


半強制的に手首を掴まれ、蓮兄は走って澪を連れてく。


こういう時はお兄ちゃんっぽい……


……ちょっとかっこいい……けど、憧れまでは行かないな……



────



「お待たせー」


澪と蓮兄は、藍の部屋へ辿り着く。


「……いや、その琴音って子がなんで藍の部屋に居るの。」


おかしいでしょ。女の子が、男の子の部屋に────


もしかして……、と思って表情に表してしまった。


澪の感情を読み取ったのか、蓮兄は口角を上げた。


「そのまさか。キスとかまで行ってんじゃない?」


「……っ」


無意識に下唇を噛み締めた。


「おっつー。弟に負けるとか、兄の威厳ついに死んだか。」


「……別に。死んでないし。」


「ホントは余裕ないんだろ?」


……絶対分かった上でイラつかせてるでしょ。


それともただ単に痴話喧嘩仲間が欲しいのか。


「蓮兄、ぼっちなの?」


「いや、急に話変わったな。」


澪は構わず、トドメを刺す。


「友達がいなくて、ついに家族しか遊び相手居なくなったの?……仕方ないな、澪が構ってあげる。」


「……は?」


蓮兄がドアを開けようと伸ばした手を、ピタリと止めた。


「……図星だった?」


あまりにも蓮兄が取り乱していて、無自覚に口角が上がった。


よし、このまま長く口論して、琴音さんに会うのを先延ばししよう。


そしたら、上手くいくはず。


「図星じゃねーし。大外れだよっ!」


顔を真っ赤にして、子供みたいの言い訳する蓮兄。


内心引きながらも、計画通りになった事に満足した。


「挨拶は後だ!俺は寝るっ」


蓮兄はすっかり怒ってしまって、自分の部屋へ行くために階段を上がった。


最後にちらりと見えたのは、蓮兄の真っ赤な耳だった。


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