Marry Me?

 立地を優先したゆえ、いまは、学生が住むようなボロいアパートに住んでいる。いまどき学生の方がもっとリッチなマンション住んでるか。駅近で、七万の物件は、この界隈でそうは見つからない。というわけで、忍び足で、玄関に、向かう、のだが……。

「もしもーし。おれー」

「っ……大樹《だいき》っ!?」ノックの音に続いて、あの穏やかな声がしたので、あたしは慌ててドアを開いた。

 すると、彼は、白いマスクをしたまま、重たそうなエコバッグを顔の高さにまで掲げて笑い、

「……疲れてるだろ。飯、作ってやんよ」

 * * *

「……来るなら来るって言ってよ。びっくりするじゃん」

「はは」と紺色のエプロンをきびきびと締めて彼は笑う。「ごめんなー。でもさー。美紗の、びっくりした顔、見たかったんだよ……」