闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

***





「綺麗……」





頭上に広がる

吸い込まれるような満天の星空。






颯に連れてこられたのは、

都内の静かなプラネタリウムだった。






貸切の広い空間で、
私たちはリクライニングシートに

深く身を沈める。






二人きりの夜空を見上げていると、
颯は穏やかな声で私に言った。






「……知ってるか?昔の航海士たちは、暗い夜の海で迷子になった船が星という『座標』を見て自分の場所を知れるように、星を頼りにして進む方向を決めたんだって」






それは、彼が持っていた星の知識——






彼が私を退屈させないために話してくれた、

優しい気遣いの一つだった。






「動かない星を見つめることで、自分が今どこにいるのかを確認する……。星は、世界で一番古い地図なんだよ」


「すごい、知らなかった!颯、なんでも知ってるんだね。……じゃあ、あの一番明るくて、青白く光ってる星は?」






私は数ある星の中で

一番大きく輝いていた星を指差した。






「冬のダイヤモンドの頂点、シリウス。地球から見える一番明るい星だよ」


「シリウス……ほんと、ダイヤモンドみたい。颯みたいに、眩しくて目立つ星だね」






そう言って私が笑うと、

颯はしばらく無言でその星を見つめる。






それから、ふっと自嘲するように静かに呟いた。







「……眩しすぎるものは、いつか目を焼くよ」







どこか遠くを見るその瞳は、
切実な思いを滲ませているようだった。






「え……?」


「それでもお前は、『お兄ちゃんと一緒にあの星に行きたい』って……昔、言ってくれたよね」


「そんな子供の頃のこと、覚えてたの?」


「お前が言ったことは、一文字だって忘れてない。……俺にとって、この暗い世界を照らしているのは、隣にいるお前だけだから」






颯の手が、暗いシートの中で

私の手をそっと握りしめる。







指先を絡める感覚に、胸の奥が熱くなる。







颯は、心から声を漏らすように、

純粋で少年のような笑みを浮かべていた。






私は、シリウスの
圧倒的な輝きに見惚れながら、






このまま彼の優しさに酔いしれていたい——






そう思っていた。