チャラリ、と金属のぶつかる音。
「この鍵が何の鍵か、教えてあげようか?」
私は静かに頷くことしかできなかった。
「……これは、俺の心の鍵だよ。そして——お前を二度と外へ出さないための、『檻』の鍵」
息を呑む間もなく
私の耳元に熱い吐息が触れた。
「……美桜、お前も望んでいるんだろう? 自由という名の冷たい空よりも、俺が作るこの甘い檻の中で——」
「一生、飼われていたいと」
——恐怖が、心臓を叩く。
だけど。それ以上に。
彼にこれほどまでに狂おしく
求められているという事実に、
私は、
言葉にできないような
悦びを感じていた。
「逃げられないよ、美桜。……いや、お前はもう逃げたくないはずだ」
私を抱きしめる腕が、さらに強まり、
息が浅くなっていく——
シトラスの香りと、彼の熱。
私は彼の胸の中で、
目の前で熱に溶かされていく
キャンドルのように
思考を溶かされてゆく。
(……ああ。もう私、戻れない……)
私は、自分自身の手で、
颯が差し出した鍵をぎゅっと握りしめた。
チャリ、と冷たい音が鳴る。
それは、彼が作り上げた
この「甘い檻」を受け入れた
私の静かな降伏でもあった。
夜空に最後の一発の花火が上がり、
淡く、儚く、
真っ暗でどこまでも果てしない
空へと消えていく。
「……愛してるよ、美桜。……お前の全部、俺に頂戴」
その花火のように、私の理性もまた、
この深い闇の中に溶け込んでいった——
***

