闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜





結果は、圧倒的な得票差で颯の優勝。





授賞式が終わり、

その長い脚がステージを降りる。





颯は、駆け寄るファンやスタッフを
優雅にかわすと、




迷いのない足取りでこちらへ歩いてきた。





数千人の視線が、
彼の歩む先にいる「私」へと集まる。





「……美桜、待たせてごめんね」





颯は私の前に立つと、
自分が授与されたばかりの重厚な



「ミスター」のサッシュを外し、
私の肩にふわりとかけた。






まるで『お前の居場所はここだ』と
言わんばかりの、”独占の笑み”を見せて。






「颯、みんな見てるよ……」


「いいんだよ」






颯は私の髪を少しだけ耳にかけると、
観客からは見えない角度で、



夏の夜、私の耳につけた
「印の跡」を指先でゆっくりとなぞった。






「……俺の特別な席は、いつだってお前のために空けてあるんだから」






その彼の甘い言葉が、

私をふわふわとした高揚感に誘い込む。





「……上城くん。美桜をここまで守ってくれてありがとう。……でも、もういいよ。ここからは、俺が責任を持って連れて帰るから」





颯が碧くんに向けたのは、

彼に対する勝者の余裕と
絶対的な排除を(はら)んだ微笑みだった。





「……先輩。美桜ちゃんを、自分の道具みたいに扱うのはやめてください」





碧くんが私の腕を掴もうとする。





けれど颯はその手を、美しい所作で、

それでいて冷酷に(さえぎ)った。






「道具? 心外だな。……俺たちは、『共犯』だよ」






颯は私の腰を強く引き寄せ、
自分の身体に密着させる。





それは、数千人の観客の前で私が





「佐伯颯の唯一の存在」として
定義された瞬間でもあった。





「……もう行こう。今夜は、お前のために特別なディナーを用意してあるんだ。誰にも邪魔されない、俺たちだけの『家』で、ゆっくりとお祝いしよう」





彼が言う『家』が、外の世界を遮断する
二人きりの『檻』だということを

私は知っている。






ミスターコンのトロフィーは、
ステージの脇に無造作に置き去りにされていた。






彼にとって学園の頂点に立つ”名誉”なんて、

私を独占するための”口実”でしかないのだ。






(……怖い。でも、私だけを見てくれるこの人が——)






私は碧くんの唖然とする視線を
背中に感じながら、



導かれるまま歩き出した。






フラッシュの光が、私たちの背中を追いかける。






それは祝福というよりも、
私の自由が奪われたことを告げる——






終わりの合図のように思えた。




***