闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

***



ステージが進み、最後のアピールタイムで
司会者が興奮気味に彼にマイクを向けた。





「佐伯さん、最後に会場の皆さんに一言お願いします!理想のデートや、好きなタイプについても気になっている子が多いみたいですよ!!」





会場が静まり返る。





颯はゆっくりとマイクを口元に寄せた。





そして彼は、再び——
迷いなく私だけを見つめた。





「理想のタイプ……ですか。俺には、俺がいないと何もできない、放っておけない子が一人いるんです。……不器用で、すぐ迷子になって、俺が支えてあげないと壊れてしまいそうな——」



「そんな、世界で一番大切な子が」





会場から「キャー!」と
悲鳴に近い歓声が上がる。






「だから、その子と死ぬまで一緒にいられたら……それ以上に望むことはありません」






『キャァァァッ!!』
『プロポーズ!? 公開告白なの!?』
『その子、誰!? 羨ましすぎる……!』





爆発するような歓声。





(それって……)





私の心臓が、痛いくらいに鳴っていた。





観客たちは、これを

「王子様による最高のロマンチックな告白」

だと言って受け取った。





けれど、私を見つめる
火傷しそうなほどの熱い視線は、





獲物を捉えた獣のように、
「もう逃がさない」という底知れない





執念にも見えた。






「——あいつ、やりやがった」






横で碧くんが、目を細めながら低くつぶやく。





「大勢の目を利用して、美桜ちゃんを『自分のもの』だってわからせるように、外堀から埋めていく……巧妙高い最悪な王子様だよ、本当」





その言葉を聞いた私は、
一瞬、息が止まりそうになった。






颯は、自分を取り巻く
すべてを『駒』にして、



私の逃げ道を一つずつ、
美しく塞いでいく——






まさに、碧くんの言う通り。





(ああ、そうだったんだ……)





夏休み頃から、
彼が不自然なほど寛容だったのも。



碧くんとの接触を許し、
夜遅くの帰宅を笑顔で迎え、

私に「自由」を味わせていたのも。






——すべては、私が今日。





自分の足でこのステージの前にたどり着くため。






私が碧くんという光に
手を伸ばせば伸ばすほど、



それを一瞬で自分の色に変えるための
「最高の舞台」を、



彼は虎視眈々(こしたんたん)と準備していたのだ。