特設ステージに響き渡る歓声。
煌びやかなステージ照明と
色とりどりのペンライト。
そして数千人の観客の熱気が、
夜のキャンパスを、昼間の暑さと同じくらい包んでいた。
そんな中、私たちはステージから
少し離れた関係者席の端に立っていた。
「すごい人……」
「そりゃそうだよ、”あの”佐伯先輩が出るんだから。みんな、伝説が生まれる瞬間を待ち望んでる」
そう話す碧くんの声は、どこか冷めていた。
ステージの照明が落ち、
一気に会場が盛り上がる。
黄色い声が混ざる中、
ステージ中央の幕から出てきたのは、
黒いタキシードに身を包んだ颯だった。
光を反射してきらめく黒髪。
影を落とす長いまつ毛。
家でエプロンをして、
私の好きなものを作ってくれる
いつもの「お兄ちゃん」の面影は、
どこにもない。
目の前のステージで、
何千人もの視線を集める彼は、
冷たく、気高く、
近寄りがたいほどの美しさを放つ
「王子様」そのものだった。
「嘘でしょ……」
あまりの変貌ぶりに息を呑んだ。
けれど、スポットライトを浴びる彼は、
熱狂する観客など存在しないかのように、
真っ直ぐに——
関係者席の暗がりにいる私を射抜いていた。

