闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

***




楽しい時間はあっという間に過ぎ、

気づけば空は、オレンジ色に染まり始めていた。





模擬店の明かりがぽつぽつと灯り始め、





キャンパスは昼間とは違う、

どこか浮き足立ったような、少し(あや)しげな夜の顔へ変わっていく。





私たちは実行委員の仕事に戻り、
夕方の”最終チェック”としてメインステージ周辺を確認していた。





夜のイベントに向けて少し離れた
ステージの方からはリハーサルの音響が漏れ、

周囲にはすでに沢山の人だかりができている。





「おーい、美桜ちゃん。 こっちこっち」





混雑状況を確認していると、
人混みの向こうから碧くんが手を振って歩いてきた。





「碧くん! そっちもすごい人だね、そろそろ入場規制が必要かな?」





彼と合流し、相談していたその時だった。






「キャァァァッ! 佐伯先輩ーー!!」

「えっ、ミスターコン!? 颯先輩が出るの!?」






ステージの方から、
悲鳴にも似た歓声が聞こえてきた。






「……えっ?」






(今、颯って言った……? お兄ちゃんが、ステージに?)





忘れていたはずの、
昨日の倉庫でのあの光景が脳裏をよぎる。





(今日はゼミがあるって言っていたはずなのに……)





その時、碧くんが少しだけ口角を上げ、

挑発的な目でステージの方を見据えた。






「……ちょっと行ってみようか、メインステージ。俺も、あの人がどんな『王子様』を演じるのか、この目で見ておきたいから」





碧くんが私の手を握る。




その手に導かれるように、
私たちは歓声の上がるメインステージへと向かった。





ステージの照明が激しく点滅し、
遠くから颯の登場を告げるアナウンスが響き渡る。






どこまでも高く澄んだ秋の空は、
黒く染まっていく。






そこにあるのは、月のような輝きか。






それとも、すべてを飲み込んでいく

闇のような絶望か。






空と同じように、私の胸の奥にも、
夜空のように暗く静かな不安が広がっていた——。






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