闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

***




碧くんと歩く昼間のキャンパスは、




まるできらきらとした
フィルターがかかったかのように輝いて見えた。





「ほら、これ見て。美桜ちゃんが好きそうだなと思って」

「わぁ、可愛い! 手作りのキャンドル?」

「そう。あとで一緒にワークショップも行く? ……あ、その前にチュロスね」





そう言うと、碧くんが私に手を差し出す。




小さく鳴る胸を笑って誤魔化しながら、
私はその手を握った。





話している間も、碧くんは、





さりげなく外側に立って
私を人混みからガードしてくれていた。





一緒に買ったチュロスは、熱々でとても甘い。





私はなぜか落ち着かない胸を
甘さで紛らわすようにチュロスを頬張りながら



手作りキャンドルのワークショップに立ち寄った。





透明の器に入った、
宝石のような色とりどりのワックス。




その中から、私は吸い寄せられるように、
淡い藤色のものを選んだ。




どこかで見覚えがあるような、
懐かしくて、しっくりくる色。





「あ、いい色。美桜ちゃんっぽいね」





碧くんが隣で笑い、
自分用に青色のワックスを手にとる。





(”私っぽい”……か。そういえば、夏祭りの時の浴衣もこんな色だったっけ)





思い返せば颯が、
「お前に一番似合う」と言ってくれた色だった。





出来上がった小さなキャンドルを手に取る。




「綺麗……」

「だね。俺、さっそく家帰ったら、部屋に飾るわ。美桜ちゃんと作った記念として」

「うん、私も!」




大切なそれをバッグにしまいながら、

私は、この時間を心の底から楽しんでいた。





「文化祭が終わったらさ、近いうちにどこか出かけない? ……紅葉とか見たいなって思ってるんだけど」





ワークショップを出ると、
碧くんが少し声を落として言った。





「紅葉……?」

「そう。大学の近くに、隠れた名所があるんだよね。……お兄さんには内緒でさ」

「内緒で……か」

「……だめ、かな?」





少しだけ首を傾げて覗き込む
碧くんの瞳に、期待のようなものが滲んで見えた。





それを見ていると、あの日、
颯に噛まれた耳の熱を

忘れてしまいそうになる。





「……わかった。行こう、二人で」





私は、碧くんの放つ明るい「光」に
圧倒されるようにして約束を交わした。