闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜





ついにこの日がやってきた。




ずらりと並ぶ看板と、吹奏楽部の演奏。

模擬店から聞こえる元気な呼び込みの声。





文化祭当日、キャンパスは朝から
大勢の来場者が舞い込んでいた。





「美桜ちゃん、お疲れ〜〜! 準備、完璧だね」





実行委員の腕章を巻いた碧くんが、
爽やかな笑顔を向けて近づいてきた。





今日の彼は、少し気合の入った髪型に、
カジュアルなパーカーがよく似合っていて、

すれ違う女の子たちが何度も振り返っている。





昨日の倉庫での不気味な光景も、
碧くんの笑顔を見ると、





遠い幻だったかのように思えてくる。





「碧くんもお疲れ様! 看板、あんなに並ぶと思わなかったよ」


「ほんとすごいよね。……ねぇ、この後一時間くらい休憩あるしさ、一緒に回ろうよ。 実行委員の特権で限定チュロス、並ばずに買えるの俺、知ってるからさ」





碧くんが少年のような顔でウィンクする。

私は一瞬、確認するように心の中でつぶやいた。





(……お兄ちゃん今日はゼミ発表の準備で自分の校舎に籠もるって言ってたし、大丈夫だよね……うん)





「うん、行きたい!」





私は笑顔で頷いた。