恋が終わっても、人生は続いていく



「……終わった」



その一言を送ると、

すぐに既読がついた。





数秒後。





『会える?』





短いメッセージ。





(……やっぱり)





少しだけ、

胸が締まる。





『うん』





それだけ返す。







夜。





いつもの場所。





ドアを開ける。





「どうだった」





神崎が、

すぐに聞く。





「……離婚するって言った」





「そっか」





それだけ。





驚きも、

責めも、

ない。





ただ、

受け止めるだけ。





(この人は、そういう人)





それが、

少しだけ安心する。





「……怒られた」





小さく笑う。





「だろうな」





同じように、

少しだけ笑う。





「最低だって言われた」





「まあ、間違ってない」





その言葉に、

少しだけ肩の力が抜ける。





(否定しないんだ)





でも。





(それでいい)





わかってるから。





「……それでも、戻らない」





はっきり言う。





神崎が、

少しだけこちらを見る。





「本気だな」





「うん」





迷いは、

もうなかった。





(怖いけど)





でも。





(決めたから)







少しの沈黙。





そのあと。





「……じゃあ」





神崎が、

ゆっくり口を開く。





「こっち来るか」





「……え?」





意味が、

すぐにわからない。





「海外」





さらっと言う。





「向こうで仕事する話、前に言っただろ」





(……あ)





思い出す。





少し前に、

そんな話をしていた。





「本気で行くの?」





「行く」





迷いのない声。





「で」





少しだけ、

こちらを見る。





「一緒に来るなら、連れてく」





その言葉。





(……何それ)





頭が、

少しだけ真っ白になる。





「……私?」





「他に誰がいる」





当たり前みたいに言う。





でも。





(それって)





「……一緒に来るって」





言葉が続かない。





「一緒に住むってこと?」





「まあ、そうなるな」





軽い。





あまりにも、

軽い。





でも。





(人生、変わるよね)





全部。





仕事も。



生活も。





今までの自分も。





「……急すぎない?」





正直な言葉。





「そうか?」





「そうだよ」





苦笑する。





(この人は、いつもこう)





大事なことを、

軽く言う。





でも。





(それでも)





「……なんで、私?」





聞いてしまう。





神崎は、

少しだけ間を置いた。





「一緒にいたいから」





シンプルな答え。





(……それだけ?)





でも。





その言葉が、

一番響く。





(この人は、ちゃんと言う)





誤魔化さない。





変に飾らない。





それが、

好きだった。





(……どうするの)





問いかける。





これは、

ただの恋じゃない。





人生の選択。





愛を選ぶか。





それとも。





「……考えさせて」





それが、

精一杯だった。





神崎は、

すぐに頷いた。





「いいよ」





それだけ。





追い詰めない。





それも、

この人らしい。







帰り道。





一人で歩く。





頭の中が、

ぐるぐるしている。





(行く?)





(残る?)





答えは、

簡単じゃない。





(好き)





それは、

はっきりしてる。





でも。





(それだけで、いいの?)





自分に問う。





静かな夜。





その答えは、

まだ出なかった。