恋が終わっても、人生は続いていく

「話、ある」



その一言を送るまでに、

どれくらい時間がかかっただろう。



送信ボタンを押したあとも、

しばらく画面を見つめていた。



(やっと、言えた)



逃げてばかりだった。



見ないふりして。



わかってるのに、

続けて。





でも。





(もう無理)





限界だった。





既読は、

すぐについた。





『いいですよ』





あっさりした返事。





(最後まで、これなんだ)





苦笑が漏れる。







夜。



いつもの部屋。





チャイムが鳴る。





ドアを開ける。





「どうも」





いつもと同じ顔。





そのことが、

少しだけ寂しい。





「入って」





短く言う。





部屋に入る。





沈黙。





ソファに座る。





向かい合う。





距離は近いのに。





もう、

前とは違う。





「で、何ですか」





軽い声。





(最後まで、軽い)





少しだけ、

笑いそうになる。





「……もうやめよう」





ゆっくり、

言葉にする。





玲央が、

少しだけ目を細める。





「何を」





「この関係」





はっきり言う。





沈黙。





少しだけ、

空気が止まる。





「……そうですか」





それだけだった。





(やっぱり)





引き止めない。





当たり前だ。





この人は、

そういう人だから。





「昨日、見た」





ふいに、

言葉が出る。





「駅で」





少しだけ、

間が空く。





「……ああ」





それだけ。





否定もしない。





言い訳もしない。





(ほんとに……)





「やっぱり、無理だった」





小さく、

笑う。





「わかってたのにね」





最初から。





「……先輩が選んだんじゃないですか」





玲央が言う。





その言葉に、

一瞬だけ、息が止まる。





(……そう)





その通りだ。





全部、

自分で選んだ。





「そうね」





静かに頷く。





「だから、終わりにする」





責めるつもりは、

もうなかった。





責めたところで、

意味がない。





「……わかりました」





あっさり。





それだけで、

終わる。





(こんなもんなんだ)





この関係は。





それでも。





「……好きだった」





ぽつりと、

こぼれる。





玲央が、

少しだけこちらを見る。





「今も、好きよ」





正直に言う。





隠しても、

仕方ないから。





「でも」





一度、

息を吸う。





「好きだけじゃ、無理だった」





それが、

全部だった。





沈黙。





少しだけ、

長い時間。





玲央は、

何も言わなかった。





それが、

この人らしい。





「……じゃあ」





立ち上がる。





「帰るか」





まるで、

いつも通りみたいに。





その言葉に、

少しだけ笑う。





「そうね」





ドアの前。





靴を履く。





「じゃあ」





玲央が、

軽く手を上げる。





「元気で」





「……ええ」





それだけ。





ドアが閉まる。





音が、

静かに響く。





一人になる。





何も変わってない部屋。





でも。





もう、

あの人はいない。





(終わった)





ゆっくりと、

ソファに座る。





涙は、

出なかった。





ただ。





(やっと、終わった)





そう思った。





でも。





胸の奥に残っているものは、

消えなかった。





それでも。





前に進むためには、

これしかなかった。