【凛視点】クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

帰り際、ゴミ箱に空き缶を捨てようとして——少しだけ躊躇った。

(……なんで捨てるのもったいないって思ってるんだろ、私)

自分でもおかしくなって、こっそり苦笑して、結局ちゃんとゴミ箱に捨てた。

私はフロアに残っていた数人へ控えめに頭を下げた。
「お先に失礼します。お疲れさまでした」

小さな声だったけれど、きちんと届いた気がした。
そのまま先輩の席にも目を向けたが、モニターに集中している顔は、声をかける隙もないほど真剣だった。

(……お疲れ様です、先輩)

声には出さず心の中だけで呟いて、私は静かにドアを抜け、廊下を通ってエレベーターホールへと向かった。