「……遅くまでお疲れ様。良かったら、これ」
低い声が、すぐ隣から聞こえた。
顔を上げると、先輩が私のデスクの側に立っていた。
その手には、缶コーヒーが一本。
「あ……っ、ありがとうございます」
反射的に受け取ると、先輩はそれだけ言って、さっさと自分のデスクへ戻っていった。
何か続きがあるわけでもなく、振り返るわけでもなく。ただ静かに、自分のパソコンに向かっている。
私はしばらく、冷たい缶を手のひらで包んだまま動けなかった。
(……私のために、買ってきてくれた?)
考えすぎかな、とは思わなかった。だって、ブラックじゃない。微糖のアイス。
先輩のデスクには、いつも無糖のブラックコーヒーのボトルが置いてある。会議の時も、残業の時も、先輩が甘いものを飲んでいるのなんて一度も見たことがない。
(どうして私の好みを知ってるんだろう…)
昼休みに自販機で買っているところを、見ていたのだろうか。それとも、ただの偶然?——いや。
私はそっと缶のプルタブを起こした。
ぷしゅ、と小気味いい音がして、冷たい空気が指先に触れる。
一口飲んだ。
(……おいしい)
疲れた体に、甘さと冷たさが沁みていく。さっきまで重かった肩が、すうっとほぐれていく気がした。
低い声が、すぐ隣から聞こえた。
顔を上げると、先輩が私のデスクの側に立っていた。
その手には、缶コーヒーが一本。
「あ……っ、ありがとうございます」
反射的に受け取ると、先輩はそれだけ言って、さっさと自分のデスクへ戻っていった。
何か続きがあるわけでもなく、振り返るわけでもなく。ただ静かに、自分のパソコンに向かっている。
私はしばらく、冷たい缶を手のひらで包んだまま動けなかった。
(……私のために、買ってきてくれた?)
考えすぎかな、とは思わなかった。だって、ブラックじゃない。微糖のアイス。
先輩のデスクには、いつも無糖のブラックコーヒーのボトルが置いてある。会議の時も、残業の時も、先輩が甘いものを飲んでいるのなんて一度も見たことがない。
(どうして私の好みを知ってるんだろう…)
昼休みに自販機で買っているところを、見ていたのだろうか。それとも、ただの偶然?——いや。
私はそっと缶のプルタブを起こした。
ぷしゅ、と小気味いい音がして、冷たい空気が指先に触れる。
一口飲んだ。
(……おいしい)
疲れた体に、甘さと冷たさが沁みていく。さっきまで重かった肩が、すうっとほぐれていく気がした。
