クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

……それでも。

もう遠くから見ているだけで終わることはない。

仕事中、フロアの向こうで彼女を見つけた時。
給湯室で偶然二人きりになった時。
誰にも気づかれないよう、ほんの一瞬だけ視線を交わすだけで――たぶん、俺はまた簡単に心拍数を乱されるのだろう。

そんな未来を想像して、思わず小さく笑ってしまった。

「……先輩?」
「……いや。これから、大変だなと思って」

そう返すと、彼女もくすっと笑う。

朝の光が差し込む静かな部屋の中。
腕の中にいる彼女の存在を確かめるように、俺はもう一度そっと抱き寄せた。

(先輩視点・完)