クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

もし、もっと早く素直になれていたら。
もし、上司という立場に怯えずに済んでいたら。
……そんな「もしも」を考えたことがないわけじゃない。

だが――たぶん、無理だった。

「……いや……」

苦笑混じりに息を吐く。

「……たぶん俺は、りんりんが何かしてくれない限り、一生そのままだった」

本当にそう思う。
自分の気持ちに気づいてからも、俺はずっと逃げ続けていた。
距離を取って、「上司として正しい」理由ばかり並べて。
遠くから見守るだけで十分だと、自分に言い聞かせて。

……けれど実際は、怖かっただけだ。

拒絶されることも。
彼女の未来を壊してしまうことも。
そして、自分の欲望を認めることも。

「えー、それは酷いです。私ばっかり頑張ったみたいじゃないですか」

頬を膨らませる彼女を見て、思わず小さく笑ってしまう。