クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

「……先輩、心臓、ちょっと速いです」
「……うるさい」

照れ隠しで彼女の額を軽く指で小突きながら返すと、彼女がくすくす笑った。
その笑い声が嬉しくて、彼女らしくて、どうしようもないほど愛おしい。

「ふふっ。……なんか、安心しました」
「……何がだ」
「だって……ずっと、私だけがドキドキしてるのかと思ってましたもん。先輩、ちょっといつもと違う顔を見せてくれた時もあったけど、ほとんど上司のままだったから……」

その言葉に、俺は小さく息を吐いた。

「……そんなわけないだろ」

むしろ逆だった。
ずっと理性で押さえ込んでいただけで、本当は限界だった。

「……ずっと、我慢してた」

ぽつりと零れた本音に、彼女がそっと俺の胸へ触れながらつぶやいた。

「……ねぇ先輩。私たち、もっと早くこうなれてたと思います?」

不意に向けられた問いに、俺は少しだけ目を伏せる。