クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

だが、彼女は照れたように小さく笑う。

「ふふっ。私も……このまま先輩の温もりをずっと感じていたいです」

その返事だけで、どうしようもなく彼女を抱きしめたくなる。
俺は愛おしさを堪えるように、彼女の頬へそっと手を添えた。

「……これからは、遠くから見ているだけじゃなくていいんだな」

思わず零れた本音だった。

今までの俺は、ずっと「見るだけ」だった。
フロアの向こう側で笑う姿を見て、安心して。
誰かと話している姿を見て、勝手に嫉妬して。
それでも上司という立場を理由に、自分の気持ちに蓋をしてきた。

けれど、もう違う。

「……はい、誰よりも近くで見てくださいね」

真っ直ぐ返されたその言葉に、胸の奥が静かに熱くなる。

「ああ、そうさせてもらうよ」

小さく笑い返しながら、俺はもう一度彼女を抱き寄せた。
胸元へ頬を寄せてくる彼女の髪をゆっくり撫でていると、彼女がちょっといたずらっぽい顔でこちらを見た。