クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

だが、言った直後、自分でも情けないほど鼓動が速くなる。
仕事ではどれだけ修羅場でも冷静でいられるのに、彼女相手だと、どうしてこんなにも余裕がなくなるのか。

「私も……好きです」

涙ぐみながら返されたその声に、胸の奥が静かに満たされていく。

彼女が俺の胸元へ顔を寄せる。
俺はその身体を包み込むように抱き寄せながら、ゆっくり息を吐いた。

……ようやく、触れられた。

ずっと遠くから見ることしか許されないと思っていた相手が、今は腕の中にいる。
それだけで、今まで抱え込んできた苦しさや葛藤が、跡形もなく溶けていくようだった。

……どれくらいそうしていただろう。

ふと、彼女の前髪をひと房そっと指先で払った。
白い額が覗く。
……その無防備さが、反則みたいに可愛かった。

気づけば俺は、引き寄せられるように彼女の額へ軽く唇を触れさせていた。

「……りんりん。朝からこんなに可愛いと、離れたくなくなるな」

半分は誤魔化しだった。
本気のまま言ってしまえば、きっと自分でも抑えが利かなくなる気がしたからだ。