クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

朝、最初に意識へ浮かび上がってきたのは、すぐ隣にある温もりだった。

浅い眠りのまま、ぼんやりと視線を向ける。
細い肩。規則正しい呼吸。胸元へそっと触れる髪の感触。

……夢じゃない。

ゆっくり目を開けると、薄いカーテン越しの朝の光が、静かな部屋を淡く照らしていた。
そして、その光の中に――すぐ隣で安心しきったように寄り添う彼女の姿があった。

「……りんりん」

掠れた声で名前を呼ぶ。
彼女が小さく肩を揺らし、少し照れたようにこちらを見上げてきた。

その瞬間、胸の奥がどうしようもなく熱くなる。

昨夜、何度も確かめ合ったはずなのに。
こうして朝になっても彼女が隣にいる事実が、未だに信じられなかった。

俺はそっと彼女の髪に触れる。
柔らかな髪が指の間を滑り落ち、その感触だけで理性が危うくなる。

「……好きだ」

自然に零れ落ちた言葉だった。
飾る余裕も、格好をつける余裕もない。ただ、胸の奥に溜まり続けていた感情が、そのまま声になっただけだ。