クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

その瞬間、熱に浮かされていた脳内に、冷徹なまでの静寂が訪れた。
それは理性が崩壊した音ではなく、むしろ逆だ。
今まで「上司」という皮を被って逃げ回っていた自分を、これ以上ないほど冷徹に客観的に見つめる「別の理性」が目を覚ましたのだ。

……ああ、そうか。
逃げていたのは、俺の方だったんだ。

「自信がない」なんて言葉で、彼女に拒絶される恐怖から自分を守り、彼女の未来を案じるフリをして、責任を取ることから逃げ続けていた。

だが、目の前の彼女は、俺のそんな醜い臆病ささえもすべて飲み込んだ上で、ここに立っている。

……分かった。もう、いい。

ここで、隠してきた本音をすべて曝け出そう。俺という人間の汚い部分も全部彼女の前に差し出そう。
その上で、彼女が俺を拒むなら、俺は指一本触れずにここを去る。それが、彼女の覚悟に対する、俺にできる唯一の誠実さだ。

だが、もし彼女が俺を受け入れてくれるというのなら——その時はもう、離さない。

「……後悔しても、知らないぞ…」

これから晒す、完璧とは程遠い俺の素顔。それを彼女にぶつける前の、せめてもの警告のつもりだった。