クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

バーを出ると、容赦のない冷たい二月の夜風が火照った顔を打ちつけた。

(……これでいい。ここで終わらせるのが、正しいんだ)

俺は必死に自分に言い聞かせながら、彼女と少し距離を取るように、駅へ向かって歩き出した。
だが、駅のロータリーが見え始めたあたりで、背後からついてきていた足音がふらりと乱れた。

「あっ……」
「りんりんっ?大丈夫か」

とっさに振り返り、よろけた彼女の腕を掴んで体を支える。
そのまま俺の腕にすがりつくようにして顔を上げた彼女は、ほんの少しだけ潤んだ瞳で俺を見上げた。

「……すみません。外の空気に当たったら、急に酔いがきちゃって……」
「……すぐそこにベンチがある。少し休むか?」
「…はい、ちょっとだけ座りたいです」

駅のロータリーの隅にある冷たいベンチまで肩を貸して歩き、彼女をゆっくりと座らせる。
俺もその隣に腰を下ろすと、冬の夜風が二人の間の沈黙をより一層際立たせた。