クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

店の外に出ると、冷たい夜風が火照った頬を撫でた。
少し早足で歩きながら、必死に自分を律する。

……俺は上司だ。彼女を駅まで送り届ける、それだけが今の俺の任務だ。
……そうだ、それでいい。

「……先輩、ちょっと! そんなに急いで歩かないでくださいよ。置いていかないで、……ね?」

だが、背後から追いかけてきた明るい声に、俺の決意はあっさりと揺らいだ。

「……っ、別に急いでない。……ちょっと考え事してただけだ」

立ち止まって振り返ると、彼女は一気に距離を詰め、俺の隣に並んでひょいと顔を覗き込んできた。

「嘘ですよ、先輩、歩くの早すぎます! せっかく美味しいもの食べて元気になったのに、これじゃ一駅着く前に疲れちゃいますよ〜。……あ、もしかして、早く私を帰して一人で飲み直そうとしてません?」
「……そんなわけないだろ。……りんりんを安全に駅まで送るのが今日の俺の任務だ」
「任務って……。相変わらず真面目すぎますよ、先輩」

彼女はおかしくなったように、くすっと笑った。