クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

「色々って……なんだ?」
警戒して目を細める俺のことなど気にもしてないように、彼女は楽しそうに続ける。

「SNS企画の予算の件! 最終的に部長、ハンコ押してくれましたけど。私、小耳に挟んだんですよ? 先輩が、あの部長に直接突撃してくれたって!」

俺は、グラスを口に運ぼうとした手を止め、あからさまに視線を泳がせた。

「!……なぜそのことを…? まぁいい……別に、ロジカルに説明しただけだ。……あの部長は数字にうるさいからな」
「えーっ、それだけじゃないはずです! あの、石橋を叩いて壊すタイプの部長ですよ? 『もし失敗したら、会社の顔に泥を塗るぞ!』って、絶対いつもの小言言われましたよね?」

「……まあ、言われたがな。……でも、最後は部長も折れたんだ。『そこまで言うなら、お前の顔を立ててやる』ってな」
「えっ、先輩、なんて言ったんですか? 教えてください、先輩の必殺フレーズ!」

彼女のキラキラした真っ直ぐな視線に射抜かれ、俺は観念したように声を潜めた。
急に肩の重荷がなくなったせいか、それともこの心地よい距離感のせいなのか…。妙に口が軽くなっている自分がいる。