クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

案内されたのは、店の奥のカウンター席。
真正面で向き合わずに済むのは助かる……。謝罪の話をするには、その方が都合が良かった。

横並びで席に着き、とりあえずの乾杯を済ませた直後。
俺はグラスを置くと、椅子を少しだけ彼女の方へ向け、数日間ずっと腹に抱えていた言葉を絞り出した。

「……りんりん。この前のことだけど。本当に、申し訳なかった。俺の不注意で……」
「はい、分かりました! 私は全然大丈夫ですっ」
「……え?」

あまりにも食い気味の即答に、俺は思わず間の抜けた声を出してしまった。
責められることも、最悪の処分を受けることも覚悟していたのに。

「ちょ……りんりん。そんなライトでいいのか……? 俺は、取り返しのつかないセクハラまがいのことを……」
「はい! 当事者の私が『大丈夫』って言ってるんだから、この話はこれで万事解決です! このことは誰にも言ってないので安心してくださいっ」

彼女はにっこりと笑い、カウンターに肘をついて、俺の顔を覗き込んできた。