クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

「……そ、そういう意味じゃ…ない」

嫌なわけが、ない。ただ、セクハラまがいのことをした加害者が、その相手と業務時間外に二人きりで食事に行くなど——普通に考えてあり得ないのだ。
だが、俺が何も言えずにいると、彼女はふっと笑って続けた。

「会議室で向かい合って謝られるより、外でご飯食べながら普通に話したいです。……私、先輩とそういう時間、ちゃんと取ったことないですし」

その柔らかい言葉に、張り詰めていたものが一気に崩れた。
怒っているわけではない。軽蔑されているわけでもない。
ただ彼女は、俺に逃げ道を与えてくれているのだ。

「……わ、分かった。じゃあ……外で」
「ありがとうございます! じゃあお店は私が決めちゃいますね。美味しいもの、たくさん食べさせてもらいますからねっ」

いつもの後輩らしい無邪気な明るさに救われ、数日間ずっと張り詰めていた肩の力が、ふっと抜けていくのを感じた。