クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

(…………っ!)

頭の中が、真っ白になった。
手のひらから伝わってきた、確かな感触と熱。
数週間の間、物理的な距離を盾にして無理やり押し込めていた感情が一瞬で理性の隙間から溢れ出しそうになる。

だが、それと全く同時に……

(……俺は、何をしている!?)

背筋が凍るような、絶対的な「絶望感」が俺の全身を貫いた。
相手は、かつての部下だ。誰よりも彼女のキャリアを応援してきた俺が、よりにもよってこんな形で彼女に触れてしまった……

抑え込んでいた想いと、取り返しのつかないことをしたという恐怖。
対極にある二つの感情が、頭の中で激しくぶつかり合う。

「……ごっ、ごめん!……手が、滑った…」

どうにか絞り出した声は、自分でも驚くほど低く、掠れていた。
動揺を隠すことすらできず、俺は火傷したように手を引っ込め、彼女の顔を見つめた。
今の自分の目が、どんな色をしているか想像したくもなかった。