【凛視点】クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

翌朝。

いつもより少し早めに出社して、エレベーターのボタンを押して待っていると、ちょうどエントランスから先輩が入ってくるのが見えた。

(あ)

心臓が、少しだけ跳ねた。

「おはようございます、先輩」

先輩はこちらに気づいて、わずかに歩みを緩めた。
「……ああ。おはよう」

低い声。それだけ。

ちょうどエレベーターが到着して、二人で乗り込んだ。
九階のボタンを押す指が、一瞬だけ重なりそうになって、思わず先に手を引いてしまった。

扉が閉まる。
二人きり。

(……あ、これ、気まずい)