「じゃん、けんっ」
「「「「ぽんっ!!!!」」」」
グー、パー、パー、パー。
「七夏の負けだ!」
「あー!!!一人負け!!!」
「それじゃあ七夏、ごちそうさま」
「七夏、ごっつぁんです!!!!」
翌日。
私たちは仲を深めるため、昼休みに学食にやってきていた。
そこで学食奢りじゃんけんになったわけであるが、ここで私が負けてしまった。
いや弦くんは最初にパーを出す癖があるし、花奈も弦くんも二回目は一回目に出した手によって予測できるから、勝とうと思ったら勝てはするが。
こういうときは私が負けた方が距離が縮まるかという思惑の元、わざと負けてみた。お金には困ってないし。
「みんなは何にする?」
「俺味噌ラーメンのトッピング全盛りで」
「えっちょ弦くん、容赦なく高いのいくじゃん」
「他人の金で食うメシほどうめぇモンはねーよ!」
「弦はがめついなあ。あ、俺唐揚げ丼で」
「そう言う春野くんも高いのいくねえ」
花奈はくすくす笑いながら、一番安いおにぎりセットを頼んできた。どうやらお金に対する気遣いがあるのは花奈だけのようだ。
弦くんは普段金欠で高いものを食べられない分今食べてしまおうということだろうか。
まあ正直、高かろうが安かろうがどっちでもいいけど。
「うーん、負けちゃったししょうがないか。はいお金」
「っかー、ごちそーさん!」
私はみんなに、食券を買うお金を渡した。
弦くんはそのお金を神棚に飾りそうな勢いで頭を下げてきているが、味噌ラーメンが売り切れる前に買った方がいいんじゃなかろうか。
そして私とおそらく同じことを思っているであろう花奈は、弦くんを呆れた顔で見ながら素通りし、おにぎりセットをもらいに行った。
「……わざと負けたでしょ」
やがて弦くんも食券を買いに行くと、私から唐揚げ丼の代金を受け取りながら怜悧は囁いてきた。
「そんなことないよ。みんなの運がよかっただけ」
「そう?花奈や弦のわかりやすい癖、七夏が気付いてないわけないと思ったんだけどな」
「春野 怜悧」の態度を崩さないながらもそう言った怜悧。
どうやら私の思惑はお見通しらしい。
「まあいっか。唐揚げ丼、ごちそうさま」
「はいはい」
怜悧はぱちんとウインクをして食券機に向かっていった。
花奈や弦くんが気づかないうちに秘密の会話をして、視線を交わして。
そういう些細なことで優越感を感じてしまう私は、やはりどうかしているのだろう。
だが、それを嫌だとは思わない。
この自分の中でどんどん大きくなっていく欲望は、私も怜悧もとっくの昔に受け入れている。
「……お腹すいた」
私は、食券機の「日替わりパスタ」のボタンを押した。
お腹が空いている。
食欲と、それから怜悧への「もっと特別扱いしてほしい欲」が、腹を空かせているのだ。
「あ、そういえばね」
その日の昼食を調達し、学食で頬張っていると。
花奈は思いついたように手をポンと叩いた。
「明日家で、パパの誕生日パーティーがあるんだ」
「おっ、花奈のトーチャン明日誕生日なのか!」
おめでたそうに祝福する弦くんに頷き、花奈はにっこりと笑った。
パーティーを楽しみにしていることがよく伝わってくる笑顔だ。
「組のみんなが集まって、年に2度とないくらいのでっかいどんちゃん騒ぎになるんだ。とっても楽しくてね!」
「へえ。花奈のお父さんには何か、プレゼントは用意したの?」
「したよ。ふふ、早く明日にならないかな!」
ウキウキといった様子で足をぶらつかせる花奈。
でもそうか、それじゃあ少なくとも明日の夜は西宮会は本部に人が密集しそうだ。
警察はさぞかし心休まる一日になるだろう、なんて考えながら、頭の中でとある計画を組み立てる。
このどんちゃん騒ぎ、「使える」ところがありそうだ。



