君にメノウを贈る時

ガタンゴトン。電車が大きく揺れる。

学生。社会人。全てのカテゴリーの人がこの空間には集まっている。そして、それぞれ違う目的地まで向かうのだ。

「ーーーと!ちょっと!起きて!」

肩を揺さぶられ、眠っていた高校三年生の天花寺琥珀(てんげいじこはく)は目を開ける。開いた口からは涎が垂れ、電車の座席に座ってから着崩した制服はさらにだらしないことになっている。

そんな彼の前に、腰に手を当てて呆れたように見つめる女子生徒が立っていた。一珊瑚(にのまえさんご)。琥珀と最寄駅が同じ友達である。

「琥珀、起きて!もうすぐ電車駅に着くから!」

「わ、わかってるよ!」

「そう言って前寝過ごしたんでしょ?私、知ってるんだからね」

「は、はぁ?誰から聞いたんだよ。その話」

都会と違い、地方の電車は夜になると利用者がグッと減る。車内には琥珀と珊瑚しかいない。二人きりだということに、今更ながら琥珀は胸を高鳴らせた。

(もうすぐ、駅に着く……)