翌日の月曜日、夕方四時。
衣都は取引先である大学病院から会社に戻るべく電車に揺られていた。大学病院は東京郊外に位置しており、本社がある浜松町からは一時間以上かかる。なので今日は直帰の予定にしていたのだが、先ほどまで話をしていたドクターに急ぎでデータを送ってほしいと依頼された。詳細データは社に戻らないとわからない。そのための予定変更だ。
(今日は残業になりそうだな)
どう資料をまとめようか、頭のなかであれこれとシミュレーションする。他院のデータ、とくに柚木記念病院からもらったフィードバックが役に立ちそう。そう思い至ったところで、ふいに衣都の脳内に彼の姿が浮かびあがった。柚木響司の不遜な笑み。
キスされたおでこに、昨日の熱がぶり返す。意味もなく額をゴシゴシと手の甲で拭って、衣都は深いため息をついた。
(たかが結婚、と考える人とは結婚はしたくない。でも……)
『あの程度の資本力で可能な施策など、数年の延命はできても抜本的な問題解決にはならない。倒産という結果は同じだ』
響司の辛辣すぎる分析は、悔しいけれど的を射ている。ツバキの未来は残念ながら明るくない。
(柚木グループのバックアップか。千載一遇の幸運ではあるよね)
口をへの字にして、う~んとうなる。
彼と結婚する可能性、ゼロと言い切れない理由はここにあった。
会社の未来と自分自身の未来、天秤にかけるにはどちらも重すぎる。
衣都は取引先である大学病院から会社に戻るべく電車に揺られていた。大学病院は東京郊外に位置しており、本社がある浜松町からは一時間以上かかる。なので今日は直帰の予定にしていたのだが、先ほどまで話をしていたドクターに急ぎでデータを送ってほしいと依頼された。詳細データは社に戻らないとわからない。そのための予定変更だ。
(今日は残業になりそうだな)
どう資料をまとめようか、頭のなかであれこれとシミュレーションする。他院のデータ、とくに柚木記念病院からもらったフィードバックが役に立ちそう。そう思い至ったところで、ふいに衣都の脳内に彼の姿が浮かびあがった。柚木響司の不遜な笑み。
キスされたおでこに、昨日の熱がぶり返す。意味もなく額をゴシゴシと手の甲で拭って、衣都は深いため息をついた。
(たかが結婚、と考える人とは結婚はしたくない。でも……)
『あの程度の資本力で可能な施策など、数年の延命はできても抜本的な問題解決にはならない。倒産という結果は同じだ』
響司の辛辣すぎる分析は、悔しいけれど的を射ている。ツバキの未来は残念ながら明るくない。
(柚木グループのバックアップか。千載一遇の幸運ではあるよね)
口をへの字にして、う~んとうなる。
彼と結婚する可能性、ゼロと言い切れない理由はここにあった。
会社の未来と自分自身の未来、天秤にかけるにはどちらも重すぎる。



