いっさい悪びれずに、彼は薄く笑った。衣都は身体の横で両のこぶしをギュッと握り、下唇を噛んだ。細い肩が小刻みに震える。
そんな衣都の様子を見ても、彼はひるむどころか平然と追い討ちをかけてきた。
「あぁ。結婚に当たり、ひとつだけ条件をつけさせてくれ」
これ以上ない、冷淡な瞳と声で彼は続けた。
「俺の前で泣くな。悪いが、俺は泣いてる女がこの世で一番嫌いなんだ」
『僕も泣かされてるナースや受付の子を何人も見てきたし』
ふと、篤之から聞いた話を思い出す。
(なるほど。柚木響司はこういう人物なのね)
ありのままの彼を目の当たりにして、かえってスッと頭がクリアになっていった。
「大丈夫です、泣いてはいません」
嘘じゃない。この肩の震えは悲しみや絶望ではなく……どちらかといえば反骨精神に近いもの。衣都は顔をあげ、にっこりと笑ってみせた。
「今回のお話、よくわかりました。夫婦は対等であるべきだと思うので」
そこで言葉を止め、衣都はキッと強く彼を見据えた。
「私もじっくり検討させてもらいます。あなたという駒を、手に入れる価値があるのかどうかを」
もちろん会社は守りたい。そのためなら自分の人生を差し出したって構わないとも思う。けれど、誰かに駒として利用されるだけの結婚を、そんな不均衡な関係性を受け入れたくはなかった。
「……なるほど」
そんな衣都の様子を見ても、彼はひるむどころか平然と追い討ちをかけてきた。
「あぁ。結婚に当たり、ひとつだけ条件をつけさせてくれ」
これ以上ない、冷淡な瞳と声で彼は続けた。
「俺の前で泣くな。悪いが、俺は泣いてる女がこの世で一番嫌いなんだ」
『僕も泣かされてるナースや受付の子を何人も見てきたし』
ふと、篤之から聞いた話を思い出す。
(なるほど。柚木響司はこういう人物なのね)
ありのままの彼を目の当たりにして、かえってスッと頭がクリアになっていった。
「大丈夫です、泣いてはいません」
嘘じゃない。この肩の震えは悲しみや絶望ではなく……どちらかといえば反骨精神に近いもの。衣都は顔をあげ、にっこりと笑ってみせた。
「今回のお話、よくわかりました。夫婦は対等であるべきだと思うので」
そこで言葉を止め、衣都はキッと強く彼を見据えた。
「私もじっくり検討させてもらいます。あなたという駒を、手に入れる価値があるのかどうかを」
もちろん会社は守りたい。そのためなら自分の人生を差し出したって構わないとも思う。けれど、誰かに駒として利用されるだけの結婚を、そんな不均衡な関係性を受け入れたくはなかった。
「……なるほど」



