「そう。俺には結婚相手よりメスのほうがずっと重要で、妥協はできないから」
つまり結婚相手は妥協してもいい、そういう意味だろう。
頭のなかがぐらりと揺れた。理屈はわからないわけではないけれど、この人は衣都の常識の範疇から大きく逸脱していて、とてもついていけない。
「既婚になれば、くだらない女が寄ってこなくなるというおまけもあるしな。このおまけ目的に適当な女で手を打とうかと考えたこともあったが……そうせずにいてよかった」
彼はそこで言葉を切り、まっすぐに衣都を見る。強い眼差しに囚われる。
「君が、最適解だ」
最適解。彼の結婚観をこれ以上ないほど反映した台詞だった。響司はそこでふっと肩の力を抜き、首をかしげた。
「逆に君がそんな不服そうな顔をする理由はどこにある? 大切な家業が助かるんだぞ、たかが結婚で」
(たかが結婚……)
恋愛はあまり得意じゃないし、もう長く恋人もいない。だけどそれでも、結婚への憧れは人並みに抱いている。喧嘩もするけど仲のいい両親。ふたりみたいな夫婦に、いつか自分もと願ってきた。
「柚木先生にとって、妻はパートナーではなく、ただ人生を優位に進めるための駒……なんですか?」
震える声で尋ねた衣都の頭上に冷えきったため息が落ちる。
「なにを今さら。政略結婚だと初めに説明しただろう? 夫婦愛だの家族の絆だのって幻想を期待されても困る」
つまり結婚相手は妥協してもいい、そういう意味だろう。
頭のなかがぐらりと揺れた。理屈はわからないわけではないけれど、この人は衣都の常識の範疇から大きく逸脱していて、とてもついていけない。
「既婚になれば、くだらない女が寄ってこなくなるというおまけもあるしな。このおまけ目的に適当な女で手を打とうかと考えたこともあったが……そうせずにいてよかった」
彼はそこで言葉を切り、まっすぐに衣都を見る。強い眼差しに囚われる。
「君が、最適解だ」
最適解。彼の結婚観をこれ以上ないほど反映した台詞だった。響司はそこでふっと肩の力を抜き、首をかしげた。
「逆に君がそんな不服そうな顔をする理由はどこにある? 大切な家業が助かるんだぞ、たかが結婚で」
(たかが結婚……)
恋愛はあまり得意じゃないし、もう長く恋人もいない。だけどそれでも、結婚への憧れは人並みに抱いている。喧嘩もするけど仲のいい両親。ふたりみたいな夫婦に、いつか自分もと願ってきた。
「柚木先生にとって、妻はパートナーではなく、ただ人生を優位に進めるための駒……なんですか?」
震える声で尋ねた衣都の頭上に冷えきったため息が落ちる。
「なにを今さら。政略結婚だと初めに説明しただろう? 夫婦愛だの家族の絆だのって幻想を期待されても困る」



