それに、自分たちは別にかしこまってランチの約束などしなくていつでも話ができる環境にある。衣都は実家暮らしだし、職場も一緒。勤め先である『ツバキ医療機器』は、衣都の父が社長、母が経理部長をしている家族経営の会社だから。
(やっぱり……会社が危ないのかな?)
あらたまっての相談、柄でもない高級ホテル、そうとしか考えられない。
ツバキ医療機器は祖父が興した会社で、医療用のメスや検査機器などを扱っている。大量生産には適さない、ニッチな需要に応える製品ラインナップを強みとしてきたが、近年は大手メーカーの資本力に押され、経営状況はかなり苦しくなっていた。
ふぅとため息をついたそのとき、ホテルの静かなロビーにそぐわない威勢のよすぎる声が響いた。
「衣都! お待たせ」
振り返ると、きちんとスーツを着込んだ父――椿屋芳樹が足早にこちらに向かってくるところだった。ぽっちゃりしたおなか周りがスーツ姿だと幾分かすっきりして、いい感じだ。
「ううん。たいして待ってないけど」
彼は衣都のその台詞を最後まで聞かず、唐突に顔の前で両手を合わせた。
「すまん!」
「え? なんでいきなり謝るの?」
意味がわからず困惑する衣都に、父は申し訳なさそうに話し出す。
「実は今日な……」
(やっぱり……会社が危ないのかな?)
あらたまっての相談、柄でもない高級ホテル、そうとしか考えられない。
ツバキ医療機器は祖父が興した会社で、医療用のメスや検査機器などを扱っている。大量生産には適さない、ニッチな需要に応える製品ラインナップを強みとしてきたが、近年は大手メーカーの資本力に押され、経営状況はかなり苦しくなっていた。
ふぅとため息をついたそのとき、ホテルの静かなロビーにそぐわない威勢のよすぎる声が響いた。
「衣都! お待たせ」
振り返ると、きちんとスーツを着込んだ父――椿屋芳樹が足早にこちらに向かってくるところだった。ぽっちゃりしたおなか周りがスーツ姿だと幾分かすっきりして、いい感じだ。
「ううん。たいして待ってないけど」
彼は衣都のその台詞を最後まで聞かず、唐突に顔の前で両手を合わせた。
「すまん!」
「え? なんでいきなり謝るの?」
意味がわからず困惑する衣都に、父は申し訳なさそうに話し出す。
「実は今日な……」



