カーテンコールはまだ鳴らない。


――怪しい。

だが、怪しいだけでは意味がない。

刑事の仕事は、勘ではなく証拠探しだ。

響華は眉間に軽く皺を寄せ、キーボードを叩く⼿を⽌めた。

画⾯に映る「⻯崎組」の⽂字が、やけに無機質に⾒える。

(こんなの、追えって⾔われても……)

思わず胸の内で毒づく。

ツーマンセルで、この規模の組織。

しかも、尻尾すら掴めない。

昨⽇の夜、久しぶりに感じたあの緩い時間が、

遠いもののように思えてくる。

響華は⼩さく息を吐き、再びキーボードに指を置いた。

――それでも、やるしかない。

正義だとか、悪だとか。

そんな線引きを考える余裕すらない現実が、

今⽇も静かに、彼⼥を机の前に縛りつけていた。