カーテンコールはまだ鳴らない。


響華は苦笑しながら、机に肘をついた。

「まあね。ちょっと……帰るの遅くなっちゃって」

蓮は⼀瞬だけ視線を逸らし、

「……昨⽇の、同級⽣の⽅と?」

と、ぽつりと聞いた。

響華は少しだけ驚いたように⽬を瞬かせてから、

「あー……うん。久しぶりだったし、つい」

と、曖昧に笑う。

蓮はそれ以上踏み込まず、

「……そうですか」

とだけ返す。

けれど、その視線が⼀瞬だけ、どこか複雑に揺れたことに、

響華は気づかなかった。

再びキーボードを叩き始める蓮の横顔を横⽬に、

響華は背もたれに体を預け、もう⼀度深く息を吐いた。