ふと、胸の奥に浮かんだ疑問。
(私は今、どこに向かってるんだろう)
その問いに答えが出る前に、背後から、聞き慣れた軽い声が
⾶んできた。
「――あっ、いた!」
反射的に振り返る。
⼈混みの向こうから、こちらへ向かって⼿を振る男が⼀⼈。
⾦髪が、ネオンの光を反射してやけに⽬⽴つ。
⾼瀬侑玖。
こちらに気づくと、満⾯の笑みを浮かべて⼩⾛りで近づいてくる。
その姿を⾒た瞬間、胸の奥のざわつきが、はっきりとした輪郭を持った。
⼈混みを縫うようにして、侑玖がこちらへ駆け寄ってくる。
近づくにつれて、その声の軽さとテンポが、記憶の中のものとぴたりと重なった。



