壁際に⽴ち、肩にかけた鞄の位置を直す。 ⾃然と、辺りを⾒回してしまう⾃分に気づいて、⼩さく苦笑した。 (……落ち着け) 逸る気持ちを抑えて、響華はため息をついた。 ポケットから煙草を取り出そうとしたが、ここが喫煙不可エリアだと 思い出し、⼿を⽌める。 代わりに、指先でライターの感触を確かめた。 時間を潰すように、視線を⾏き交う⼈々へと向ける。 楽しそうに笑う若者。 疲れ切った顔の会社員。 どこか焦った様⼦で歩く⼈。 ――みんな、それぞれの場所へ帰っていく。