カーテンコールはまだ鳴らない。


* * *

電⾞のドアが閉まり、低い駆動⾳とともに⾞両が動き出す。

燐⾳響華は、ドア横のポールに軽く体を預けながら、流れていく⾞窓の

闇をぼんやりと眺めていた。

平⽇の夜。

⾞内は程よく⼈がいて、スーツ姿の会社員や、スマホに夢中な若者が、

それぞれの時間を過ごしている。

ポケットの中で、スマホが⼩さく存在を主張している気がしたが、

取り出すことはしなかった。