カーテンコールはまだ鳴らない。


「……よし」

椅⼦を引き、⽴ち上がる。

肩に溜まった疲労を軽く回してほぐし、ジャケットを⽻織った。

隣のデスクを⾒ると、蓮はまだ画⾯を⾒つめたまま、キーボードに

指を⾛らせている。

相変わらず、集中すると周りが⾒えなくなるタイプだ。

「五⽊くん」

声をかけると、数秒遅れてこちらを向く。

「……はい?」

「今⽇はここまでにしよう。お疲れ」

そう⾔って軽く笑うと、蓮は⼀瞬だけ⽬を瞬かせてから、

静かに頷いた。

「……お疲れ様です。気をつけて帰ってください」

いつも通りの、簡潔な⾔葉。

けれど、その声にはほんの少しだけ、柔らかさがあった。

「うん。五⽊くんもね」

それだけ返して、響華は⾃分のデスクの引き出しを閉め、

鞄を⼿に取る。