ダウナーちゃんは死にたがり

伊織は視線を落とした。

胸の奥が、少しだけ変な感じになる。

褒められるようなことじゃない。

ただ、生きてるだけなのに。

でも。

「……ありがと。」

その声は、思ったより小さかった。

亮哉は何も返さず、ただ煙草を携帯灰皿に押し込んだ。

火が消える。

伊織はそれをぼんやり見つめてから、ふと口を開いた。

「宇野くん」

「ん?」

「今日はもう、煙草吸わないでね」

「なんで?」

「……私が死ぬより前に体壊されたら困る。」

亮哉が一瞬黙る。

それから、堪えきれないみたいに小さく笑った。

「相馬、それわりと重い口説き文句だよ。」

「え?」

「無自覚こわ。」

伊織は意味が分からない、という顔のまま首を傾げた。

その様子を見て、亮哉はまた笑う。

空はまだ白い。

けれど昨日より、少しだけ。

呼吸がしやすい昼だった。