さっきまで普通だったのに。
急に、世界から切り離されたみたいな感覚になる。
このまま何⼗年も⽣きるのか、とか。
何者にもならないまま終わるのか、とか。
考えたくもないことが浮かぶ。
天井を⾒る。
暗い。
静か。
誰もいない家。
ふと、思う。
――相⾺は。
あいつは、いつもこんな感じなのか。
理由もなく、波みたいに漠然と押し寄せる衝動。
昼間は平然としていて。
夜になると、不意にやってくる。
フェンスの向こうに⽴ててしまうくらい、強い波。
亮哉は⼩さく息を吐く。
「……きつ。」
これが、毎⽇なら。
そりゃ“めんどくさい”って⾔うよな。
⾃分は現実派だ。
死なない。
死ぬ選択肢は取らない。
効率が悪い。
後処理が⾯倒。
痛いのは嫌だ。
いくらでも、理屈で抑えられる。
でも。
もし理屈が効かないくらい、波が強かったら?
伊織の顔が浮かぶ。
眠たげな⿊⽬。
フェンスの外に⽴っていた背中。



