窓枠から⼿を離すと同時に、指先が少し震える。
⼼臓がうるさい。
⽣きている⾳。
窓を閉める。
カチ、と鍵をかける。
その⾳が、やけに⼤きい。
床に座り込む。
膝を抱える。
「……明⽇までは。」
約束は、それだけ。
⼀年じゃない。
⼀⽣でもない。
明⽇。
それくらいなら。
⾃殺衝動は、波だ。
強く押し寄せて、
しばらくすれば引いていく。
伊織は⽬を閉じる。
暗闇の中に、もう⼀度あの顔が浮かぶ。
屋上で煙草を吸わずに、ただため息をつく姿。
「宇野くんのせいで......」
⼩さく笑う。
少しだけ、あたたかい。
ベッドに戻る。
布団に潜る。
まだ胸はざわついているけれど、
さっきよりは静か。
「……死ねないじゃん。」
囁きは、夜に溶けた。
午前⼆時三⼗七分。
波は引いた。
明⽇はきっと、案外早く来るだろう。



