⼆階の窓を開けると、午後の⾵が部屋の中を通り抜けた。
カーテンが揺れ、窓枠に⼿をかけた亮哉の髪を撫でる。
当たり前のようにポケットからタバコを取り出し、
ライターをカチリと鳴らす。
⽕をつけ、先端を⾚く染めたタバコを⼝に咥える。
煙をゆっくり吸い込むと、ふと、屋上での伊織の声が頭をよぎった。
『……⽣きるのって、めんどくさいなぁと思って』
あの、気怠げで淡々とした声。
視線は空を漂い、何かを追うでもなく、ただ遠くを⾒つめていた。
胸の奥にひんやりと残る孤独な響き。
亮哉は、無意識に⼝⾓を少し上げる。
煙を吐きながら、静かに呟いた。
「……確かに、⽣きるのって⾯倒だね。」
その掠れた声は、部屋の静寂に溶けて、街に流れる⾵に乗る。
⾃分で⾔ったその⾔葉に、亮哉は⾃嘲を込めて笑った。
タバコを再び⼝に咥え、ゆっくりとふかす。
煙の⾹りが⿐腔をくすぐり、少しだけ落ち着きをもたらした。
窓の向こうの世界は変わらず動き続けている。
亮哉はただ、煙を吐きながらその動きを眺めた。
──誰に構われるでもなく、誰かに責められるでもなく、
今⽇も、ただ⾃分はここにいる。


